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建築家の夢(プロローグ)


■ プロローグ

 カーン・カーンと師走の滝川に、乾いた音が響きわたる。
12月17日 上棟式の前の日のこと、土台を敷き終え、大工さん達が
いっせいに柱を掛け矢で打ち付けている朝のひととき。
前日まで、扁桃腺にかかり40度の熱が3日続いて点滴を打ちながら現場に通った。
そのためだろうか、不安が交差する中、この音が妙に心に響く。
次第にその音が小さくなっていき、昔の記憶が鮮やかに蘇ってきた。
中学一年のときの技術家庭で創った作品を先生に誉められたこと。
建築家になろうと思った頃。
大学に行って、建築に自分に失望し悩んだこと。
初めてガウディの作品に接して感動した日。
建築の素晴らしさに再び目覚めた日。
数々の夢が生れ、数々の夢が去っていき、諦めずに追いかけてきた日々。
そして、今は亡き父に誓ったあのとき・・・・
得も言われぬ心の奮えがやってきた。自然と涙があふれてくる。
その時、一本の道が視えた気がした。心にひかれたレールを感じる。
手探りで歩いてきた道に光が差した思いだった。
もう戻れない、もう戻れない一歩を歩き出したのだぞと、自分に言い聞かせていると、ふと我に返った。
眼のまえには、リズミカルに柱を建てていく大工さん達がいた。
そこでは相変わらず心地よい音が響いていた。



これは1995年6月17日、私のデビュー作となった「光と風が滝のように降り注ぐ家」で見学会&パーティーを開かせて頂いた折に、皆様に配ったあいさつ文です。建築家が卵から生まれた瞬間でした。常に初心を忘れずに、この日を思い出すことにしています。ここまでに到る、私の葛藤をお話ししていくつもりです。

建築家の夢(子供の頃の夢)つづく