建築家のひとりごと

建築家の家づくり、住宅現場のよもやま話や、趣味、猫好き、薔薇好き、スペイン好きな話など、思いつくままにつぶやきます。

コラム一覧

中庭の効用(コロナ禍で改めて気付いた事)

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 自邸の話で恐縮ですが、我が家は敷地36坪に中庭を囲むコの字型の小さな家です。1階の半分が仕事場であり、各部屋は中庭を挟んで対峙しています。各部屋を繋ぐのは小さな玄関と階段のみ。各部屋は小さいけど、中庭を挟んで視覚的に敷地一杯の距離を見通せます。仕事場は将来どちらかが介護が必要な時にも機能するように、トイレと洗面、浴室を隣り合わせにしました。


つづき

外から戻り中庭を通った先の玄関から入ると隣が洗面所(廊下がない)、在宅勤務対応(元々自宅兼事務所)やオンライン会議時の空間隔離、万が一の自宅療養時の隔離のしやすさ。そして各部屋に2か所以上の窓(各部屋、三面が外部壁)による換気。

中庭については、今迄は各部屋への光や風の採り込みや、木を植えて自然を身近にする事に注目していましたが、各部屋のクッションとなる中庭の存在は、今回のコロナ禍の今後を見据えた住まいのあり方にもヒントがあるように思えます。

また、実は自宅にいる時間が増えたので、この夏思い切って猫を飼うことにしました。子猫2匹はまだ目が離せられない時期ですが、我々が食事しているときは、中庭を挟んだ対面の仕事場に置いた猫のゲージを見守ることができて、これも中庭の効用だと思っています。

※リビングダイニングから中庭を挟んで仕事場を見る(子猫2匹の様子を離れた所から見守る)


曖昧な空間(境界線のない世界)

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 日本人は曖昧でYES、NOがはっきりしていない人種と言われます。相手と協調性のある行動が誤解を生む事もありますが、相手にうつさない為にマスクを着用する事がすんなり実行できる優しい国民だと感じます。



つづき

建築空間に置き換えると、欧州の擁壁のような壁と窓、切り分けられた室内空間に比べ、日本には縁側、土間、障子、ハッキリと境界線を作らない世界がありました。

スペインのパティオのように、住民しか入れない空間が建物中央部に位置するのに対し、長屋、路地空間、外とも内とも言えない、通路上の共同生活空間が存在していました。

日本には、自然と共存するという思想に根付き、自分を守るものは壁ではなく、人や自然との距離を上手く活用してきたのではないでしょうか。

コロナ禍により、人との接触を避ける為、個室に閉じこもりがちだと、精神的に参ってしまいます。ソーシャルディスタンスを保ち、コミュニケーションを阻害しない、日本文化の持つ外部と内部の曖昧な空間について考えてみませんか。

 

 

庭は小さな生態系!一本でも森になる

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 住宅地では概ね建ぺい率が60%以下です。敷地100㎡(約30坪)なら最低でも40㎡(約12坪)は建物がない場所があります。一部が駐車スペースとしても青空は敷地の半分程度広がっているのです。



つづき

今までも建主には敷地内に一本の木を植えましょうと提案してきました。実を言うと、自邸でも中庭にもみじを植えたいと妻に提案すると反対されました。手入れが大変、鳥や虫がやってきて嫌だ、邪魔でしょ。同じように思っている人いませんか?何度か説得を試みて、今では無くてはならない家のシンボルになり、季節が変わるたびに、植えて良かったねと話しています。

たとえ一本の木でも家にとっては森となります。自然豊かな環境は、人工物だけでは造りえません。自然を身近に感じてこそ、毎日の生活に心穏やかになる暮らしがあると思いませんか。

生活様式が見直されそうなwithコロナにおいて、新築やリフォームでも家の内部だけでなく、外の環境も一緒に考えてみてはどうでしょう。

※枝分かれして上部を見上げるとまるで森の中(イロハモミジ)

※足元は中庭タイル床に90cm角の大地に続く穴、この位のスペースでも育ちます。

暮らしに彩りを!緑を植えよう

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 緊急事態宣言の自粛中、DIYや園芸に目を向ける人が増えました。家に居る機会が増えて、掃除片付けや庭造りなど、まとめてできる時間が出来ました。今後もテレワークの導入で、移動時間が趣味の時間に取って代われるチャンスでもあります。


つづき

しかしながら、同じ暮らしが続くと単調になり飽きてしまいます。今まで以上に家の中の密度は増え、ストレスの原因にもなりかねません。これから家を建てようという事であれば、近ず離れずの提案も思い描けますが、現実は今までの暮らしの延長です。

家の中だけでは窮屈になりがちです。もし一軒家であるなら庭を見直してみませんか。道路際は大抵が車庫でコンクリートが打たれています。この部分を緑にするだけで、まるで世界が変わります。道路際は光を遮りませんので、植物は良く育ちます。いずれは車の要らない世界が来るでしょう。塀をなくし、建物と一体となった植物を育てて、これからの暮らしを緑で癒してもらいましょう。

※道路際 奥行き3m程度でも、緑は十分に育ちます。(写真は西面道路)

観察力を養いましょう

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 散歩の回数が増えました。今迄は季節の変わり目に花々を見に行く程度。今では、運動も兼ねて週に二回ほど。同じコースでは飽きてしまうので、東西南北4コース。同じコースは2週間程でやってきます。ただ歩くだけの道が様変わりしました。2週間後には違う花が咲いていたり、新たな発見があったり。


つづき

ある住宅の玄関前の小さなスペースに可愛い花を見つけました。ネットでようやく名前が判明し、その花が何度も歩いている緑道にも自生しているのを見つけました。今迄は自らが知る花ばかり見ていて気付きませんでした。興味を持つ事で視野が広がります。

家づくりの相談を建主としていると、建主本人の経験や知識以外の事に触れると戸惑われます。それでも新たな発見を楽しみ取り入れる勇気、気づきが家づくりの醍醐味です。  毎日の変化が少ない日々だからこそ、その平凡な中に小さな発見があります。今は観察する目が養われる時です。スローな時間を有意義に過ごしましょう。

 

※ さくらの根元に自生するタツナミソウ(立浪草)と思われる。

※ 最初に見つけた散歩途中の住宅の玄関先。コバノタツナミ(園芸品種)と思われる。

今こそ自然と対話しよう

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 先の見えない不安の毎日でストレスは溜まるばかり。運動で発散することもできず、家庭ではやり慣れない事ばかりでイライラする。そんな時には、ご近所の庭や道路脇、公園の片隅など、身の回りの土に生える草花を観察しながら散歩しましょう。


つづき

この時期は一週間違えば、すっかり景色が変わっています。同じ風景を見続けることで変化に気づき、今まで気にも留めなかった世界が違って見えてくるかもしれません。

余裕ができたら、小さくても土のスペースを用意して、植物を地植えしてみませんか。建物と道路の間に、何かしらスペースがあるはずです。駐車場の一部を土に替えてもいいでしょう。大地のエネルギーを受けた植物は鉢植えとは成長力が違います。  庭は小さな生態系です。植物や昆虫と共生する暮らしを思い描いてみてください。偶然できたスローな時間を自然との対話に使ってみませんか。