作品一覧

横浜の家01(自邸)/四季を感じながら住む家

  • 所 在 地 :神奈川県横浜市
  • 竣  工:2012年3月
  • 構  造:木造SE構法 地上2階建て+ロフト
  • 延床面積:92.80㎡ (28.07坪)ロフト含む
  • 敷地面積:120.97㎡(36.59坪)
  • 備  考:耐震等級3 長期優良住宅 フラット35S 蓄熱式温水床暖房 太陽熱温水システム

 

日本の四季を楽しむ 一本のもみじ

敷地は正方形に近い36坪の平坦な土地。地区一体がほぼ同じ大きさの敷地サイズで、違いは道路の位置関係くらいなので似たような住宅が立ち並んでいます。敷地に特徴が無い中で、さりげなく個性を出そうと考えました。

南にアパート3階建があり、南に庭を設けても覗かれる心配から窓を開放的にできない。そこでアパートからの視線を遮りながら太陽光を取り入れる形として、中庭を囲むコの字型プランに落ち着いた。

この中庭案が登場した時点で、地元の富士山の造園業者(造園屋の所有地)の山で自然に成長しているもみじを見て回った。その中から、この中庭にあう形を見つけ出し、紅葉の様子を確認して住宅完成後に移植した。その甲斐あって、春の新緑、夏の木漏れ日、秋の紅葉、冬の枝振り、晴れの日も雨の日も毎日の微妙な変化に気づく暮らしができている。

道路から一歩下がったプランでは、街にひらいた10坪の庭があり、つる薔薇や四季折々の花々が道行く人の楽しみとなっている。他人に見てもらう事は予想以上に手入れのやりがいとなっている。

建築は決して主張せず、自然が主役となり住む人や道ゆく人を楽しませてくれるこの家は、私の目指す有機的建築に一歩近づけたかなと感じている。

また低燃費住宅として蓄熱式温水床暖房で全館暖房を試み、太陽熱温水システムで風呂のお湯を作り大きな扉で強烈な西日を遮り、エネルギーの消費を極力抑えながらも快適な住まいに仕上げています。

 

太陽の動きを 感じながら暮らす

太陽の角度は夏と冬で違うことは当然のことですが、夏至78°と冬至32°の最大差が46°(東京)もあることは、数字で確認すると改めて驚きます。これほどの角度差があるので、庇(軒の出)はたいへん有効なのです。

敷地は約11mの正方形です。その中に幅3.4mの中庭を設けたので、各部屋の幅は3mになりました。4畳半が幅2.7mなのでかなり狭いです。南に庭を取れば、同じ面積でも室内幅6m確保できます。狭い敷地にわざわざ中庭を設けて、狭い部屋を作るなんて考えられない!と言うのが普通です。そうまでして何がメリットなのでしょうか?

ひとことで言えば、空間が豊かになります。それは部屋が小さく、ほとんどが外に面しているのでたっぷりと部屋の隅々まで入る太陽光と短い風の道のおかげです。空間が小さければ冷暖房のエネルギーも少なくて済みます。そこに自然樹を植えれば、中庭が主役になります。中庭に落ちる木漏れ日は一日の動き、季節による高度変化と、毎日ちょとずつ変わって行きます。大げさに言えば、地球と共に生きているという感じがします。

この空間を訪れた人は大抵思ったより広いと言います。それは中庭を通して10mが見通せるからです。敷地一杯に近い距離です。お日さまと共に暮らす気持ちのいい空間は、心を穏やかにしてくれる事でしょう。

2020年10月01日

上和田の家/風と戯れ花と愛しむ混構造の家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2002年2月
  • 構  造:1階RC造+2階木造在来工法(混構造) 地上2階建て
  • 延床面積:264.02㎡ (79.87坪)ロフト含む
  • 敷地面積:443.53㎡(134.17坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 屋上庭園

 

面と線

「中澤さん、私は一日に3回庭を散歩するんですよ」施主のこのひと言から、設計は始まった 手塩にかけた花々を眺めるのが、毎日の楽しみで、家・庭・門扉・塀などが西側の道路から調和して見え、外を通る人も楽しませる景観としたいと言う事であった。もちろん家の中からも庭の木々を眺めたいだろう。

内と外での視線が交わらない様にすることが、最大の問題だと直感した。その解答として道からは壁の連続で面となり、家の中への視線をさえぎり、家の各部屋からは壁が線となり、庭に向かって大開放する壁の建築であった。

風と戯れる

敷地は南北で1mほど高低差があった。「今まで住んできた家が、1.2m地盤より上がった所に床があり、風通しがいいので、これまでと同じ高さに1階を設定してほしい」との希望があった。通常の基礎よりお金がかかりますよと主張したのだが、風通しを最大に考慮する結論になり、設計を進めていく事となった。

ならば、せっかくお金をかけて上げた床下を有効利用することを思いついた。それが、縁の下(床スラブ下)から風が入り込み、中庭に流れ込む仕掛けだった。おまけに床下は開放地面となるため、中庭にもみじを植えることが可能となった。風と積極的に関わり、自然を家の中にとり入れ、まさしく風と戯れる家となりました。

家のファッション

この建物は、一階がコンクリートの壁構造で、二階に在来工法の木造が載っている特殊な建築物である。外壁の仕上げにいたっても、コンクリート打ち放しと、レンガタイル貼りの一階とモルタル下地のアクリルリシン吹き付けの二階と表情が変わる。そこへきて屋上庭園など緑も重なり、複雑な色合いを見せる。材料の持つ質感や、色というものは、人が服を着るがごとく、様々な選び方がある。

いわば家のファッションであり、建主の好みが反映しやすい部分でもある。建築家として気をつけていることは、その材料の持つ本質をそこなわない事、材料同士が反発しあわないように、全体の調和を第一に考えることです。

2020年10月02日

今泉の公会堂/自然素材と木構造の公共建築

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2016年3月
  • 構  造:木造在来工法 平屋
  • 延床面積:123.30㎡ (37.30坪)
  • 備  考:土台・柱:富士ヒノキ4寸角 桁・梁:杉静岡県産材

 

雨でも祭りができるように

第2回目の建設委員会にて、三案のプランを提示しました。A案「もっともオーソドックなプラン」B案「土間廊下が内外部空間をつなげるプラン」C案「多用途に変化する革新プラン」です。建築家として最も自信があるのはC案でした。正直他の案は、比較のために用意して臨みました。

蓋をあけてみると、全員一致でC案を押して頂いた。C案とは「真ん中に大きな玄関ホールを持ち、左右に個室を配する。和室と集会室を離すことで、それぞれが同時に使う事もでき、落ち着いた和室が演出できる。玄関ホールは、時に会議室の延長としても使え、お祭り時には内外部解放された使い方もできる。敷地に対して最もコンパクトで道路側に広場が確保できる。」というものです。

この時の原型をほぼいじることなく、最終案まで進みました。従来の公会堂のスタイルからは程遠い提案にもかかわらず、理解を示して頂けた建設委員会のメンバーに感謝いたします。建築はつくづくクライアントの理解力があって初めて陽の目を見るものだと、実感しました。

難しい仕事をこなしてくれたパートナー

早々とプランの方向性が打ち出せたので、最大の焦点は建設費でした。平屋とはいえ、大きな屋根の大ホールがあり、誰の目にもお金がかかりそうと映りました。ただ私としては、入札ならこの建物を造ってみたいという業者が現れると信じていました。

それが入札で最低価格を提示し、施工を担う事になった「建築工房わたなべ」でした。明らかにギリギリの工事金額の提示にもかかわらず、仕事内容は細かいところまで配慮されて最高の建物が出来たと思います。どんなに自信のある図面を描いても、それが造れる相手がいなければ絵に描いた餅です。「建築工房わたなべ」は最高のパートナーとしてきっちり仕事をこなしてくれました。

これから町内のシンボルとして何十年も使われていくことでしょう。時間が経てばたつほど味わい深い物になる素材を使用しています。町内の愛される建物になって頂ければ、建築家冥利に尽きます。どうか可愛がって育てていって欲しいと思います。

2020年10月03日

水戸の家01/蓄熱式床暖房と収納にこだわった家

  • 所 在 地 :茨城県水戸市
  • 竣  工:2005年2月
  • 構  造:木造在来工法 2階建て
  • 延床面積:163.82㎡ (49.55坪)
  • 敷地面積:264.47㎡ (80.00坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 

 

譲れない夫婦の希望

初めて奥さんとお会いして、お話しを聞く。知人だった夫は「中澤君、庭は芝生にしてくれよ!」妻「芝生なんて手入れしないんだから、いや」夫「芝生がないなら家作らない」夫は芝生の庭が欲しくて、妻はタイルのテラスがいい。お互い主張を譲らず、目の前で夫婦喧嘩が始まる。思わず「どちらの夢もかなえましょう。」と言ってしまった。

さて、どうしたものかと考えた末、住み分けがはっきりするプランにして、自分の居場所を明確にしようと考えました。妻の希望をかなえたリビングダイニングからはテラスへつながり、夫の部屋からは、芝生の庭が見渡せるというL型プランを提案。リビングダイニングはオープンキッチンにして、視線の広がる大きな部屋を目指しました。

施主のこだわり

夫は床暖房、妻は広いリビングがどうしても欲しかった。広い空間と床暖房は必要不可欠とも言える関係で、床暖房の得意な私にとっては願ってもない依頼だった。奥さんが広いリビングを欲しがった理由は、大きなテーブルが欲しかったためである。家事、子供の勉強、家に帰ってからの仕事、すべてそのテーブルで行ないたかったのです。

できれば3メートルのムク一枚板。最終的には2.4メートルになったが、ダイニングテーブルのムク材料の吟味から素材探しは始まった。すべての物は収納され、窓以外の壁3方向は、それぞれ用途に合わせた収納壁となった。壁のほとんどが、オリジナル収納家具に囲まれ、施主の好みと使い方が十二分に発揮され「たったひとつのブランド」にふさわしい空間となりました。

収納扉の天然化粧板は、木材メーカーで100種の材種から悩みに悩んで選んだ注文品。木の色、木目に徹底的にこだわる施主と共に、私自身も勉強になりました。時に施主のこだわりは、設計者の経験をはるかにしのぎ、新しい材料との出会い、工法、考え方を生み出してくれます。

2020年10月04日

一の宮の家01/SE構法混構造のシンプルモダンな家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2007年6月
  • 構  造:RC造+木造SE構法 地下1階地上2階建て
  • 延床面積:162.18㎡ (49.06坪)
  • 敷地面積:386.08㎡ (116.78坪)
  • 備  考:RC打ち放し 蓄熱式温水床暖房 

 

住みながら建てかえる母の家

これは、実家を建て替える母と祖母の家物語です。中学生のときに自分で家を設計したいと思い立つ。大学時代のスケッチ、設計事務所に就職してから父と本格的に計画した事もある。今思えば昔の設計は明らかに力量不足。まだ先と夢を語っているうちに、祖父、父が相次いで亡くなった。それから早十三年が過ぎ母から家づくりを依頼された。

祖母は九十歳(計画当時)元気ではあるが、さすが年相応の体力になってきて母があせった。「自分と祖母の空間だけ先につくってよ」と注文。そこで一番頭を悩ましたのは、仮住まいだった。祖母は「あたしゃ仮住まいなんていやだよ」この年で外には住めないと言い出した。言い出したらテコでも動かない。

高齢者にとって家づくりは大変エネルギーがいるから、私も母も「住みながら建てかえる」事を模索した。現在の家を壊さずに、残っている土地に計画する事が、絶対条件となった。増築ではなく、引越ししたら旧家は取り壊す。その解体も視野に入れたアプローチ、構造、施工方法、そして将来の二世帯住宅これら諸条件が建築家に課せられた使命でした。

子供の頃感じた風の道

敷地は百十六坪あるといっても、旧家の建っている所以外は、富士山の溶岩が見えている凸凹の庭だった。全面道路は坂道で道路の方が低く敷地とは二mの段差がある。道路斜線が厳しく道路際には建てられない。

そこで目をつけたのが旧家の道路側の十四畳ほどの客間だった部分。そこを解体すれば残った家で十分生活でき必要な土地が確保できた。後は、富士山の溶岩掘りと旧家を完成後どうやって解体するか考えるだけだ。こうした発想から将来増築可能なように南側に重機が入る通路を確保した。複雑な敷地形状と融和した建築が設計できたと思っている。

そして、新築の建つ位置は南北の風道があり、富士山へ向かう海風が、敷地内でも一番通るところだという事を、子供の頃から肌で感じてきた。この風の道を家に取り入れることにした。

母からの注文

Q1.祖母のため住みながら建てかえて!建築家なんだから、そのぐらいできるでしょ。
A 1.生活に支障のない旧家の一部を解体して、敷地の道路側にコンパクトに計画。新築ができたところで 引越して残りの旧家を解体する。大きく空いた跡地で畑をはじめる事を提案。

Q 2.私はM邸(過去に2世帯住宅で設計した家)がいい。
A 2.スープの冷めない距離が特徴のM邸のように、将来2世帯に増築する時は、畑とした敷地中央を中庭として建物が囲う、付かず離れずの距離を保てる配置計画にした。

Q 3.コンクリート打放しがいい。
A 3.予算的に全面RC造とはいかなかったので、車庫と道路境界塀とバルコニー塀を打放しとして強調した。

Q 4.寝室は別にしたいが、夜、心配だから祖母の気配を感じる事ができるように。
A 4.1 5畳ほどの空間を日中はひと部屋として使い、寝る時は真ん中をふすまで仕切り、母、祖母それぞれの 個室となる。祖母の部屋からは直接トイレに行けるようにした。

シンボルツリーと有機的建築

玄関アプローチに山で育った樹齢20年の自然樹形のサルスベリを植えました。建物と一体になったパティオの木は、道行く人を楽しませ、1階、2階の各部屋や浴室のトップライトから、様々な表情を見せてくれます。幹の樹形を眺め、上部に咲く花を楽しむ。自然と身近に接する仕掛けが有機的建築につながります。


設計から完成までを ブログ「建築家自邸物語」 で紹介しています。

2020年10月05日

大泉学園の家/開放的な中庭とプライバシーが両立した家

  • 所 在 地 :東京都練馬区
  • 竣  工:2005年6月
  • 構  造:木造在来工法 2階建て+ロフト
  • 延床面積:135.99㎡ (41.14坪)
  • 敷地面積:146.72㎡ (44.38坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 

 

夫婦円満の秘訣

「私たち夫婦は性格がまったく正反対なんですよ」と笑いながら奥さんが話され、隣のだんなさんが楽しそうに聞いている。初めて会ったときのKさん夫婦の雰囲気が印象的で、私は直感しました。お互いの領域に踏み込まない事が夫婦円満の秘訣なんだ、家のプランに反映させよう。オゾンのコンペでは、その提案が受け入れられ、決め手になったのでしょう。

中庭を囲みながら、それぞれが独立性を持った個室配置

敷地はバス通りに面して交通量があり、道路を挟んだ南側は現地を見下ろすような高台でした。こうした事から中庭を囲むコの字型プランとし、1階は中庭に面して開放的に配置し、道路からの視線をさえぎりました。2階の個室は各方角に向かって視線を外に向けました。

3層構造によるプライバシーの確保

最大の特徴が、お互い気を遣わないでもすむ空間として、夫の部屋(書斎)を中2階(1階より1.6Mの高さ)に設定し、1階のリビングや2階の子供部屋の両方からも離れた場所に配置する提案をしました。3層構造による高さの違いから心理的効果をもたらし、プライバシーと中庭の開放感の両立を可能にし、個人の領域を作れたと考えています。

夫の部屋(書斎)へのアプローチは階段の中間の踊り場から入り、無駄な廊下を省きます。夫の部屋を中間層に設けたため、その下の一階は、一般の部屋を設定できない高さなので、駐輪場や物置などベタ基礎をそのまま床として使用しながら、人が立てるぎりぎりの天井高を確保した、設計になりました。

建主からの手紙

本格的な冬到来・・のはずが、我が家は床暖房のおかげで、ぽっかぽかです。朝晩3時間ずつつけるだけで、子供達は、Tシャツで過ごしています。2階もほとんど暖房をつけていません。想像以上の効果にビックリしています。廊下に出てヒヤッとしないのも嬉しいことです。

昨日から、中庭の木に電飾を付けました。とてもロマンチックです。お蔭様で季節ごとに色々楽しめて、素敵な家です。キッチンも使い勝手がとてもよく、無駄な動きをせずに、料理が作れます。物置は涼しくて、ゴミを回収日まで置いておいても臭いません。

予想外だったのは、各部屋にテレビまで置いて快適にしたのに、それぞれの部屋で過ごしていたのは初めの2週間位で、結局皆リビングに集まるようになってしまい、チャンネル争いで以前のように喧嘩をしています。勉強も下二人はキッチンでしています。やはり一人は寂しいのかも知れません。

夏になると、夜も1階は冷房を入れなくても涼しいので、子供達は交代でソファーで犬と寝ています。ホントに心地良い我が家、といった感じです。

2020年10月06日

滝川の家02/借景を取り込んだ山荘のような家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2003年6月
  • 構  造:木造在来工法 2階建て+ロフト
  • 延床面積:131.72㎡ (39.85坪)
  • 敷地面積:159.18㎡ (48.15坪)
  • 備  考:薪ストーブ

 

地元に愛される滝川の観音さん

過去の完成見学会を訪れた施主が、設計を気に入ってくれて会うことになりました。住んでいる場所ではなくて、ご両親の土地に建て替えるというので、その土地に伺いました。その場所が偶然、私のデビュー作となった家のすぐ傍でした。一年も通った場所なので、なじみがあります。

このあたりは昔、祭りで草競馬を行なった(馬場が道となって残っている)、滝川の観音さんと呼ばれるお寺があります。このお寺の土地には桜の大木が何十本とあり、住宅地と思えない自然豊かなところです。

ひらめき

ぽかぽかとした陽気の中、旧家の縁側でご家族と話しをしました。まるで近所の人が家に上がらずに、立ち話をしているような雰囲気です。雑談をしながら、この家族には昔のような土間が似合うと感じました。そして目の前の見事なお寺の自然(桜の大木)を、家の中から眺めることができたら、どんなにすばらしいだろうかと思いました。

借景を生活に取り込む山小屋風を提案

この家の最大の特徴は、2階のリビングダイニングの窓です。北側と西側を覆うお寺の桜の木々を眺めること、大胆にも借景を生活に取り入れる事を提案しました。大きな引き込戸は、木製特注品です。コーナーに開けることにより、開放感を演出しました。まるで手を伸ばすと桜に届くほどの臨場感が生まれました。

また、薪ストーブを設置したいという施主のかねてからの思いがあり、その設置位置と窓の関係から、思い切ってキッチンを部屋の中心に持ってきました。形が特別なので、必然的にオリジナルキッチンとなり、鍋物を囲むテーブルにもなる中心的存在としてリビングの主役に躍り出たのです。

1階は玄関引戸を開けると土間となり、玄関の機能というより、時に洗濯物干し場になったり、犬の小屋だったり、ご近所さんとの憩いの場となって活躍しています。

2020年10月07日

国立の家/狭小3階建てロフト付4層構造の家

  • 所 在 地 :東京都国立市
  • 竣  工:2011年11月
  • 構  造:木造SE構法 地上3階建て+ロフト
  • 延床面積:92.00㎡ (27.83坪)車庫・ロフト含まず
  • 敷地面積:66.28㎡ (20.05坪)
  • 備  考:準耐火建築物 耐震等級3 フラット35s 蓄熱式温水床暖房

 

二転三転の土地探し

施主は私に初めて仕事(花屋の内装設計)を依頼してくれたクライアントで、その後十数年来の友人である。施主のY氏はずっと私の設計の家に住むことが夢だったという。建築家冥利に尽きるのだが、ここまで来る過程は紆余曲折、結構しんどい道だった。当初は高円寺の16坪の敷地に建つ中古住宅を購入して住んでいて、そこを賃貸&自邸の建替え案で進めた。しかしいろんな条件が厳しく断念。高円寺を売却するつもりで土地探しを始めたが、なかなか希望に合う土地は見つからない。9坪の土地も検討した。

家づくりを始めて3年が過ぎたある日、国立市に条件の良い土地が見つかった。Y氏は国立に縁があり、土地勘もあったのでかなりその気になった。敷地は前面道路が広く、細長い20坪の土地だった。光があたる気持ちの良い敷地で、私自身も気に入った。もっと狭い敷地で計画を練ってきた私は広いね、十分に満足のいく建物が出来るよ答えた。

敷地二十坪の狭小住宅

土地を購入する事になり、ふたを開けてみると、土地決済の銀行ローンとフラット35の関係で、なんと1週間でプランと概算見積もりを作成しなければならない。最低1ヶ月は必要な内容である。しかしのんびりしていると他人に土地が渡ってしまう。綱渡りのような世界だったが、1週間後に銀行へプラン提出できた。その後にじっくりと計画を再検討したが、大きさとコンセプトは変わることなく進んだ。

それが可能だったのが、過去に何度も計画したおかげで、施主家族の希望する家のイメージが判っていたから。この場所ならどういう空間が欲しいのか、阿吽の呼吸で感じられたのだった。

狭小三階建てロフト付四層構造の家

前面道路は歩道を入れて16mある広い南面道路で、太陽光がたっぷり降注ぐ。ただし車の往来が多いので、あまりオープンだと視線が気になる敷地。そして狭小地で厄介なのが北側斜線です。第2種高度地区なので高さ5m以上から北面と東面が建物形状に影響する。視線と斜線の対応が設計のポイントになりました。

Ⅰ 視線の対応
2階をリビングダイニングとして道路側にバルコニーと高い塀を提案。周りからの視線を隠しつつ、十分に太陽が部屋の奥まで入る壁としてファサードを印象付ける。

Ⅱ 斜線の対応
1階の階高を通常より60cm低く設定。1階は土間床としてホビールームのような玄関を提案し天井高さを確保する。全体を下げることで、2階までは斜線の影響がない空間となる。3階以上は斜線ぎりぎりの屋根形状がそのまま空間として使える構成で、ロフト付4層構造の大胆な断面となる。

一見単純な平面構成に見えるが、壁が少なく屋根断面が特殊な為、構造は複雑である。それでもSE構法により、狭小3階建てでは難しい耐震等級3も取得する地震に強い家が出来上がった。

 

2020年10月08日

店舗改装(ケーキショップ)/無垢の建築素材にこだわったパティスリー

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2011年8月
  • 構  造:店舗改装

 

季節感のある演出

最初にパティシエにお会いした時に、自分が創るケーキには季節感を出したいと言いました。私も常々、日本に住む事の喜びは四季にあると思っています。そしてそれは日常の建築の本質的テーマでもあり、作られるケーキが建築にどう結び付けられるか思いをはせました。店舗の内装素材にこだわったのは、季節により変化する湿度を機械的な調整だけに頼らずに、自然素材の持つ湿度調整の可能性に求めたからです。

例えば、調湿機能が3倍以上の効用を発揮すると言われる木口面を使った「ウッドタイル」の収納扉と局面壁、堅木で土足でも耐えられる塗装いらずの床材「ユーラシアンチーク」、木目が美しく根っこの部分を意味する「マッパバール」の棚板、大理石の粉でできた自然素材「スタッコラースト」の局面塗り壁など。 料理の素材と建築の素材、パティシエとお互いに理解しあえたから選び出された答えだと思います。オーナーもふたりのやり取りを信頼して任せてくれました。

2020年10月09日

横浜の家02/ビルトインガレージと中庭を持つ家(ゼロエネ住宅)

  • 所 在 地 :神奈川県横浜市
  • 竣  工:2018年10月
  • 構  造:木造SE構法 地上2階建て
  • 延床面積:108.03㎡ (32.68坪)車庫含む
  • 敷地面積:127.05㎡(38.43坪)
  • 備  考:H28ゼロエネルギー住宅(ZEH)BELS★5 耐震等級3 長期優良住宅 

 

施主と意気投合して依頼される

施主は事務所と同地域に住む40代夫婦でした。両親と同じマンションの別棟に住んでいて、近くに土地を探していました。マンションから目と鼻の先の土地が分譲され、すぐに申込んだそうです。条件付きの土地(施工者が決まっている)ではなかったので、設計事務所、ハウスメーカーと探していたところでした。

ネットで近所に設計事務所があるという事で連絡がありました。とりあえず会ってみましょうという事で、自邸兼事務所に来ていただきました。最初は夫のみで訪ねて来ましが、この初顔合わせで、施主と私の境遇が似ている事がわかり、意気投合してお互いが信頼できそうだと感じました。

土地の状況は近所なのですぐ理解できて、早速案を出すことになりました。当初は予算が厳しい数字だったので、かなり小さな家でしたが、何案かの提示の後、ビルトイン車庫と中庭を持つ案で落ち着きました。

パブリックとプライベートを分ける中庭の提案

敷地は南と北が旗竿敷地で隣家の通路となっていて日当たりの条件が良い処でした。東西に細長い土地なので、道路側のパブリックスペース(LDK)とプライベート(子供部屋や寝室)の間に中庭を配置して分けました。車と自転車(その時点で5台あった)置場が必要で、ビルトイン車庫にして上階にLDKを提案。車庫は天井を低くして、LDKはスキップフロアーとなっています。

予算が増えてしまったけど、今までかかっていた駐車場代やゼロエネ住宅にして光熱費の削減(実際は売電でプラス)をシュミレーションして、納得して頂きました。

完成後もバラのアドバイスで家づくりの延長戦

完成後は近所という事で、我が家のようにバラやガーデニングをやりたいという事で、施主とホームセンターやグリーンショップに行って、バラや植物の手入れなどをアドバイスしています。植物は数年後の成長が楽しみです。

 

2020年10月10日

一の宮の家02/母の家と庭を挟んで建つ娘の家(ゼロエネ住宅)

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2013年7月
  • 構  造:木造在来工法 地上2階建て
  • 延床面積:86.00㎡ (26.01坪)
  • 敷地面積:193.96㎡(58.67坪)
  • 備  考:H24ゼロエネルギー住宅 耐震等級3 長期優良住宅 フラット35S

 

実家の敷地に姉家族がやってきた

実家の母の家が完成してから、母は念願の畑を目の前に持ち、祖母から野菜作りを教わり楽しんでいた。祖母は96歳を超えても元気だった。そんな折、あろうことか私が横浜に家を建てる事になった。長男として将来の敷地内に二世帯住宅を作ると約束していたにも関わらずである。

母からは了解を得て計画が進み、その横浜の上棟式予定日に祖母が突然亡くなった。苦しむ事もなく大往生だった。母の家が完成から5年後の事でした。

工事中なのでストップするわけにいかず建てることに。その横浜の自邸完成を母と姉家族が見に来てくれた。建物を見て、これはもはや富士に帰ってこないと姉夫妻が確信する。

母一人ではかわいそうだから我々が面倒を見るから、隣に家を建ててくれと姉夫妻から依頼される。そうして同市内に住んでいた姉家族がやってきた。義理兄が一人になりたい時に干渉しないように、敷地を分割して全く別棟で提案。中庭を介して付かず離れずの生活が始まりました。

※母の家の土間と木製デッキに3 m のテーブルを出して、中庭で完成パーティーを開く

2020年10月11日

一の宮の家03/中心にある吹き抜けを囲む家(ゼロエネ住宅)

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2015年9月
  • 構  造:木造SE構法 地上2階建て
  • 延床面積:113.34㎡ (34.29坪)
  • 敷地面積:134.86㎡ (40.80坪)
  • 備  考:H26ゼロエネルギー住宅 耐震等級3 長期優良住宅 

 

子どもの頃からの友人の母の家

施主は子供のころからの友人の母親です。同敷地内に友人夫妻も別棟で住んでいますが、親が住んでいた古い家屋の建替えです。建替えですが、隣地の敷地に建てて古い方はその後に解体するという段取りでした。

この友人とは実家が100m位しか離れていないので、子供のころから何百回となく行き来してきました。古い家屋も親もよく知っている関係だったので、感慨深いものがあります。当面は母親一人で住みますが、将来は友人夫妻もそちらへ移ることも考慮した設計となりました。

中心に吹き抜けを要するゼロエネ住宅

省エネで冬が暖かい家を求められた事と、タイミング的に国土交通省のゼロエネ住宅補助金が申請できたので、H26ゼロエネルギー住宅の基準にあう高気密高断熱の住宅です。もちろん静岡県に建つので耐震等級3で頑丈な建物として木造SE構法を選択しました。

建物中央部分には2階の渡り廊下を配置して、真ん中に階段も含めた大きな吹き抜けとなっています。ゼロエネ住宅の計算ではリビングの吹き抜けは不利になりますが、サッシなどで工夫してゼロエネ基準を満たしています。それゆえ、南の大きな窓から冬は燦燦と太陽光が入ります。観葉植物もよく育つと施主から喜ばれています。

また、2階バルコニー広く深い屋根で覆われ、2か所から出入りでき、洗濯物が多少の雨でも心配なく干せられるようになっています。

2020年10月12日

水戸の家02/傾斜地に建つパティオのある家

  • 所 在 地 :茨城県水戸市
  • 竣  工:2007年7月
  • 構  造:RC造+木造在来工法  地下1階地上2階建て
  • 延床面積:168.45㎡ (50.95坪)
  • 敷地面積:491.74㎡ (148.75坪)
  • 備  考:車庫RC打ち放し 蓄熱式温水床暖房 

 

高低差を活かして中庭を囲うスキップフロアー

計画敷地は別荘地のような傾斜地にあり、山側の隣地は雑木林の様相を呈していた。前面道路から山側の隣地境界まで六mの高低差で傾斜している。前面道路は狭くあまりに高低差があり車の出入りには不向きだったので、隣地の両親の敷地から車のアプローチをする事になった。それでも三mの高低差があり、地下に車庫、地上二階建の家を作ることになった。

一階をスキップフロアーにして、傾斜地の土地形状にあった計画とした。建物を大きく見せたいという施主の希望に応え、傾斜地には珍しいパティオ(囲まれた中庭)を提案。このコンセプトが気に入られ設計は進んだ。この家には他にも特徴があり、居間の大空間には最近手に入らなくなってきた丸太梁を使っている。

大工泣かせ、大工冥利に尽きる無垢階段

施主の強い希望で丸太の桁と無垢材で階段を作って欲しいという、かなり無謀な注文に棟梁が応えたました。山から切り出した丸太を割いてもらうという方法で材料を手に入れました。段板は先端が皮を剥いだ自然状態で、一枚一枚形が違う無垢材です。

しかもササラ桁の方も丸太を割いた状態ですから、ひとつひとつの材をあててその場でノミを入れていかないと、製作できないという大工泣かせの注文です。それを大工冥利に尽きる仕事だと、毎日2回ノミを研ぎ、一週間かけて作ってくれました。まさしく職人芸、職人魂の賜物です。

2020年10月13日

水戸の家03/無垢板の上り框を持つ土間玄関の家

  • 所 在 地 :茨城県水戸市
  • 竣  工:2009年5月
  • 構  造:木造在来工法  地上2階建て
  • 延床面積:150.51㎡ (45.53坪)
  • 敷地面積:498.63㎡ (150.83坪)
  • 備  考:市街化調整区域

 

両親の宿泊室を提案

二人の小学生を持つ30代夫婦の家。内外とも白と黒を基調としたシンプルモダン。その中でポイントは両親が宿泊するのに使う旅館風な和室と無垢板の上り框を持つ土間玄関。

最初にお会いした時点で施主は自分で作成した間取りを持っていました。各部屋のブロック図のようなものです。どんな部屋が欲しくて、それが1階なのか2階に欲しいのか参考になります。建築家はそれをその通りに作ってしまっては仕事したことになりませんから(笑)プロとしての提案をします。

一般的に素人が間取りで一番苦労するのは階段の位置です。1階と2階のつながりを立体的に想像できないとちぐはぐになります。これができたら素人ではないので、無理もありません。

私が提案したのは、注文に存在していなかった和室とそれに絡んだ玄関土間と吹き抜けを生かした階段です。旅館風な縁側を持つ和室を提案したのは、同市内に住むご両親への配慮でした。たまには宿泊していける空間を作る事で、より親睦を深めていただきたいと考えたからです。こうした発想は施主と雑談していてひらめきを感じるものです。

白と黒が若さを感じさせ、シックな落ち着きを持たせた

施主と一番気があったのは色についてです。内外とも白と黒を基調にして素材探しをしました。とはいえ全体が真っ白ではなくて、木には木のもつ色を尊重することでした。部分的には一部大胆な色も使用しています。しかしながら全体のシックな感じがポイントの色さえも調和させて見せています。外壁の白は夕日に当たるとベージュ色に染まります。それを黒が際立たせてくれています。

 

2020年10月14日

旭村の家/若さと伝統が調和した混構造の家

  • 所 在 地 :茨城県鉾田市
  • 竣  工:2006年3月
  • 構  造:RC造+木造在来工法  地上2階建て
  • 延床面積:184.52㎡ (55.82坪)車庫含む
  • 敷地面積:339.50㎡ (102.69坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 平面的異種構造

 

若い施主と一緒に挑戦する

「オヤブン(施主からそう呼ばれていた)かっこいいのにしてよ!」という30代前半の若い施主のため、若さ(コンクリート打放し)を前面に出しつつ、伝統(木造在来工法)との調和をテーマにしました。

コンクリート打放しというシャープさと、木造の持つやわらかさが融合しています。施主の細やかなこだわりが、確実な職人技術を通して個性あふれるデザインを実現しています。 高い天井と大きな窓から光あふれる空間は、「モダンリビング」と呼ぶにふさわしい、デザインにこだわる若い世代への生活提案です。

平面的な異種構造で木造とRC造を結ぶ

該当敷地は、施主家族が経営する保育園に隣接した、広大な土地の一部です。周りの保育園の建物が大きいので、建物が小さく見えない工夫が必要でした。そして、開放的で視線を適度に感じながらも、プライバシーが保てる空間が希望でした。

保育園側から見た時に大きな建物に見えるように横長のプランとし、さらに地上から浮き上がらせ、リビングダイニングを中間階に設定して、開放的な大窓を作りました。こうした希望をかなえることのできる構造として、コンクリートと木造の混構造を選び、平面的な異種構造を階段部のエキスパンジョイントで結ぶ挑戦的設計となったのです。

施主の要望

室内は勿論の事、目前に広がる保育園を見渡せるダイニングキッチンが希望でした。思い切ったオープンキッチンとして、側面も前面も大きな窓で囲みました。天井が高くキッチンにも、たっぷりと太陽光が射し込みます。空間が大きくても、蓄熱式床暖房で快適に暮らせる、開放的なつくりのリビングダイニングキッチンです。

どこからも見えるのでデザインを重視し、打放しの壁や天井吊のステンレスフードと、若い人らしい希望が盛り込まれました。それでいて、大きなシンク(トーヨーキッチンの3段シンク)とIHと食洗機がコンパクトにまとまり、シンプルな動線から意外と使いやすいと喜ばれています。近くに住む祖父母のために工夫したスキップフロアーで、玄関からリビングまで階段5段で上がれるのも、休日には3世代で食事をしたいと願う施主の配慮に応えたものです。

 

2020年10月15日

富士宮の家/我が家は太陽光で部屋干し!共働きの家

  • 所 在 地 :静岡県富士宮市
  • 竣  工:2004年11月
  • 構  造:木造在来工法  地上2階建て
  • 延床面積:153.20㎡ (46.34坪)
  • 敷地面積:333.63㎡ (100.92坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 

 

共働き夫婦の切実な想い

「中澤さん、ズボンは物干し竿に通して干したいんです!」洗濯干しに情熱を燃やす奥さんの訴えに心を動かされました。乾燥機では満足できない施主のために、太陽光のもと洗濯物を干せる空間の提案です。

ご夫婦とも教師をやっていて、一生の仕事と決めています。共働きとして一番厄介なのが洗濯物。留守の間に雨降られたりするといけないので、外には干して出られません。共働きが増えた今の時代には切実な問題です。

春には花粉も飛んできます。前述のように竿も一本では足りません。だからといって、「洗濯場としてのサンルームではもったいない」というのが発想の原点です。

土間サンルームの提案

普段は室内空間の一つであり、雨の日や留守時の洗濯物干し場に早代わりする空間を考えました。それがトップライトとテラス窓の組み合わせによるL型空間の土間です。濡れた洗濯物も、床が土間であれば気になりません。

トップライトや南に面した大きなテラス窓で、朝から夕方までたっぷりと太陽光が注ぎます。夜洗濯をして翌日帰宅後に取り込むライフスタイルに合わせ、家族の「暮らし」にあわせた住宅です。

2020年10月16日

杉並の家(リフォーム)/新しい我が家はダイニングで集う

  • 所 在 地 :東京都杉並区
  • 竣  工:2001年9月
  • 構  造:木造在来工法 増改築
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房 

 

リフォームでも蓄熱式温水床暖房の提案

リフォームの依頼を受けて訪ねてみると、どこを直したらいいのか、という事からの相談でした。一番切実な思いは、高齢の母親が足腰悪くなって、トイレとお風呂が現状では不便なことでした。ついでといってはなんだが、キッチンが使いにくく、家族団欒の場所がないので、増築してリビングダイニングにしたいという要望でした。

高齢者にはベットの生活を提案し、押入れだったところをトイレにして、ワンルームのすっきりした空間の方が、安全だと説明しました。また、寝室は北側の納戸だった場所を利用するので、寒いから蓄熱式温水床暖房を提案しました。浴室も窓だったところを出窓に変えて、浴槽に入りやすい形状としました。お風呂場の大きさは同じでも、窓形状によりゆったりとした気分になれます。

キッチンは増築部分を基礎から作るので、蓄熱式温水床暖房を設置して今までの生活とがらりと変えて、対面式の食卓テーブルが中心の空間となりました。隣部屋に応接室があるのですが(今まではリビングに使用)リフォーム後はダイニングが家族の中心となりました。

母親はベットから起きてトイレに行くのが楽になり、冬でも寒くなく元気になりました。一人で外にも出られるようになり、また旦那さんは家に早く帰ってくるようになったと、喜ばれています。

※室内の改修が終わり住み始めて落ち着いたところで、外構部分も改修して庭の手入れもしやすくスッキリとなりました。

2020年10月17日

石坂の家/ギャラリー型ガレージ付きの2世帯住宅

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2003年11月
  • 構  造:木造在来工法  地上2階建て+ロフト
  • 延床面積:168.42㎡ (50.95坪)車庫含む
  • 敷地面積:240.90㎡(72.87坪)
  • 備  考:ビルトインガレージ 

 

ギャラリー型ガレージが入る3層構造を提案

「ナカチ(子供の頃からこう呼ばれている)、キッチュなやつたのむわ!」どういう意味と聞き返すと、「だまし絵みたいなものさ」と友人の施主は言う。しばらく絶句してしまった。とはいえ、友人の性格は子供の頃からの付き合いなので、承知している。ヒントをくれたと思って考えよう。

思いついたのは、外から見た印象では中が伺え知れないように、外観と内部の印象が違って、訪れた人が困惑するというもの。奇抜なデザインというのは、私の嫌いとしているところなので、理詰めにそれを断面構成という観点から試みることにした。

ビルトイン車庫をぎりぎりの高さでつくり、その上に一部屋個室がのる。その上は屋根裏部屋だ。外からは単純な2階建てのようだが、一部3層構造になっている。これには家族構成と生活時間帯の違いという使い勝手に対応する理にかなった提案。

1階は両親とリビングダイニング、中間階に妹、2階に施主家族、屋根裏部屋は友人の秘密基地と、コンパクトにまとまっている。車好きの施主のため、ギャラリーのようなビルトイン車庫がおまけでついた。おまけの割にはかなり好評な2世帯住宅が誕生しました。

2020年10月18日

寺市場の家/音楽ルーム付きの風の通る家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2000年4月
  • 構  造:木造在来工法  地上2階建て
  • 延床面積:115.50㎡ (34.94坪)
  • 敷地面積:189.35㎡(57.28坪)
  • 備  考:音楽ルーム

 

重量ブロックを積み上げた音楽室の提案

施主は当時東京に住んでいたのですが、富士の実家の敷地内に建てるという事でした。東京に住んでいて富士でも仕事をしている私に声をかけて頂きました。私が2歳まで暮らしていた家の隣の土地で、施主曰く、遊んでもらったという話です。2歳では記憶にありませんが、懐かしい土地で、意欲が湧きました。

さて、何十年ぶりの再会にて、必要最小限の小さな家を求められました。小さいからといっても、趣味の音楽の仲間が集まるのでその時には大勢の人をもてなすスペースがほしいという要望です。夫は指揮者をしていて、妻は演奏者です。別々の楽団に入っているという、熱のいれようでした。練習部屋がほしいということで、重量ブロックを積み上げた音楽室を、木造の中に配置する提案をしました。これはお金をかけずに防音室を作る作戦です。

また、小さい空間を広く使える方法として、和室の北側の廊下も部屋の一部として捉えました。いわば、縁側が北側についていると思って下さい。部屋と部屋の境は、引き込み戸で区切ります。和室は4畳しかないのですが、開けたときは居間、廊下が一体となり、10数人の宴会も可能です。この引き込み戸は1階だけで、7ヶ所あります。

結果的に真ん中をえぐったようなプランになり、南北の距離が短くなったので風がよく通り、タタミに寝転がっていると、実に気持ちが良いそうです。

 

2020年10月19日

清水の家/空中テラスとらせん階段の家

  • 所 在 地 :静岡県静岡市清水区
  • 竣  工:1999年12月
  • 構  造:鉄骨造  地上3階建て
  • 延床面積:143.72㎡ (43.47坪)車庫含む
  • 敷地面積:100.22㎡ (30.32坪)
  • 備  考:グレーチングの中庭テラス

 

らせん階段の光の塔を提案

施主と出会ってから2年ほど過ぎたある日、いい土地が見つかったから、相談にのってくれないかと連絡を受けた。妻の実家に近く、そこに住みたいのだが、決めるには不安があると言う。両側にすでに建物が、敷地いっぱいに建っていて、自分達の家に光が入るのだろうか?また30坪の土地に思い通りの家が建つのだろうか、という事でした。

私がその土地を見に行き、その場で提案した事は、2階にグレーチングの中庭テラスをつくり、家の中心に光あふれる空間を設け、各部屋はその空間に面して配置する。車を2台持っていたので、鉄骨造にして柱スパンを大きくとれば出し入れが楽に出来、30坪の敷地の持つ特性を生かして設計は可能だと話しました。グレーチングは建築面積に入らなかったので、(当時の見解)建ぺい率60%でも、敷地を最大限に生かせるでしょうと説明。

こうして施主の不安も解消し、土地購入の話しが一気に進み、具体的設計に進むことになる。土地探しからはじめた、典型的な例である。

グレーチングの中庭テラス部分には、らせん階段の塔を設け、この家のシンボルともなった。最上部からはトップライトの光が射し込み、一階玄関まで明るい。

 

2020年10月20日

荒田島の家/向かい合って住む!新しいスタイルの2世帯住宅

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:1999年4月
  • 構  造:RC造+木造在来工法(混構造) 地下1階地上3階建て
  • 延床面積:285.02㎡ (86.21坪)車庫含まず
  • 敷地面積:209.72㎡ (63.44坪)
  • 備  考:RC打ち放し 蓄熱式温水床暖房 グレーチングの中庭テラス

 

旗ざお敷地に求められたもの

30メートルの細長い私道の先に、60坪の土地がありました。いわゆる旗ざお敷地というものです。親子でそれぞれ車を持ち、3台が常に使われていました。現状では、3台が私道に縦に並び、出し入れするたびに入れ替えをするという、実に不便な状態でした。

建替えるにあたっては、この状況を解消する事と、この機に本格的に住まう2世帯(親世帯、息子世帯)が、お互いのびのび暮らせるような提案を求められました。

向かい合うプランもスキップで干渉を避ける

敷地は周りより一段低く、脇には小川が流れ、風通しがよくない土地でした。1階に3台の車が入るスペースを確保するため、RCと木造の混構造を提案しました。駐車スペースを確保するため、コンクリートの大梁でスパンを飛ばし、上部を軽い木造(2層分)にすることで、大胆な構造が可能となったのです。

親世帯の地下にはRCの倉庫を作りました。敷地の支持層が地盤下1.2メートルまで掘る必要があったので、埋め戻さないで半地下として利用したのです。

親世帯、子世帯はそれぞれ独立して機能が揃い、中庭をはさんで向き合うプランとしました。このプランの大きな特徴は、お互いの視線が交わらない様に建物の床レベルを半分の高さでずらし、お互いの生活が干渉しない様に心がけたことです。

中庭は2階レベルでグレーチングの床を使ったテラスとして、風通しをよくしました。光あふれる中庭には、互いのバルコニーがらせん階段で結ばれ、外から直接部屋に入れるようになっています。お互いの生活圏を明確にし、付かず離れずの関係にした事で、それぞれが思い思いの生活スタイルを保っていられるようになりました。

スープの冷めない距離の関係

週末にはお孫さんが、おじいちゃん家に泊まるといって、遊びに行くそうです。60坪の敷地内にあっても、他人の家に泊まりに行く感覚が持てる「スープの冷めない距離」の2世帯住宅となったのです。

2世帯住宅設計のポイント

ご両親が揃っている2世帯では、しばしば嫁、姑の問題が発生します。これは皆さんがご存知のようにお互いが気を遣い、設計者も十分に注意を払って設計します。意外と気づかないのが親子の関係です。父、息子のような実の親子では、互いのことを言い出しにくく、内に秘めているものです。この機に親から独立してもらいたい父と、まだ甘えたい息子、またその逆もあります。具体的なプランに反映しずらい父子の心情を察する心配りが、2世帯住宅設計では大事だと思います。

2020年10月21日

神戸の家/片流れ屋根とL型に開放する家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:1997年12月
  • 構  造:木造在来工法 地上2階建て
  • 延床面積:127.36㎡ (38.53坪)
  • 敷地面積:202.02㎡ (66.55坪)
  • 備  考:市街化調整区域

 

Tの字プランで車庫と庭を分ける

1年ほど土地探しをしていた施主から連絡が入り、土地を見に行くことになりました。東側が道路に面し、南側は奥の隣家の私道という、日当たりが良さそうな所でした。探していた条件に問題はないとなり、設計を始めることとなりました。

道路側は車庫スペースと玄関として、Tの字プランで、敷地を遮断するように平屋の居間部分を作る。道路から見えない庭のスペースをつくり、部屋は庭に対してL型に開放する。

1階の客間は、和室らしくしないで、ふちなし畳敷きの和洋折衷部屋としました。居間と一体となる事を意識しているため間仕切りのふすまは、全部引き込戸。居間は唯一平屋部分であり二階がないため、斜め天井にし空間の豊かさを表現することを試みました。

庭へ出る扉は特注木製引き戸で全開でき、テラスと一体となるように意識している。キッチンと洗面所、勝手口の関係は、既成概念にとらわれず、使いやすさを追求した施主との賜物です。

2020年10月22日

吹上の家/一文字瓦を使った大屋根の家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:1996年10月
  • 構  造:木造在来工法 地上2階建て
  • 延床面積:178.41㎡ (53.97坪)
  • 敷地面積:1010.94㎡ (305.81坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房

 

建替えの決め手になったのは大屋根

施主は子供の頃からの友人です。小、中、高校時代と何百回も遊びに行った家です。知り尽くした土地で、たびたび夕食をご馳走になり、ご両親とも旧知の仲です。まるで家族のように接してきた縁のある家族の家を設計依頼される事になるとは、うれしいかぎりです。

実は最初は増改築案と、新築案の二つで進みました。数ヶ月の間、スケッチを何案か提案後、今迄、増築を繰り返していたので、その先また手を入れないとならないなら、思い切って新築(建替え)にしようとなりました。

決め手になったのは大屋根でした。増築ではどうしても繋いだ形になり、屋根がすっきりしない。父親の希望は屋根が瓦で、堂々とした佇まい。若い世代に配慮し、すっきりとした一文字瓦を使い大屋根の割に全体を軽く見せる事に注意しました。

内部は、和風を強調しながらも現在の洋風な生活様式に違和感なく入り込めるように和洋の境なく統一したデザインを心がけました。構造的には上り梁を多用し、小屋裏空間をできる限り納戸などに有効に利用できるように設計しています。

当時、普及しだしたプレカットを採用。上り梁を採用したことで、プレカットを始めたばかりの材木やと3ヶ月に及ぶ打合せと試行錯誤の結果、ようやく上棟を迎えました。この時の経験が大きく、現在当たり前となった、プレカットには考え深いものがあります。

 

2020年10月23日

三鷹の家/2階を極限まで低くした高齢者の家

  • 所 在 地 :東京都三鷹市
  • 竣  工:1995年9月
  • 構  造:木造在来工法 地上2階建て
  • 延床面積:92.29㎡ (27.92坪)
  • 敷地面積:108.80㎡ (32.91坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房

 

階高2.2mの2階案を提案

依頼されたのは70代前半の高齢夫婦の二人だけの家でした。お子さんはそれぞれ独立して家庭を持ち、近くに住んでいるとのこと。まず最初に考えたのは、現在足腰が丈夫でも毎日の階段昇降を少しでも楽にさせてあげたい、という事でした。

平屋のバリアフリーが一番いいのでしょうが、30坪の限られた土地の中、個室がほしいということで、2階が必要でした。

そこで提案したのが、2階までの高さが2.2メートルの家です。1階から2階の高さを階高といい、通常は3メートル近くあります。階高をぎりぎりまで低くして、緩やかな階段を作ろうと考えました。当然その下の空間は、2メートル程度にしかなりません。廊下やトイレなど天井が低くても良いような、1階と2階の上下関係を設定し、大胆な平面構成と構造の工夫により、実現しました。

2020年10月24日

滝川の家01(デビュー作)/光と風が滝のように降り注ぐ家

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:1995年6月
  • 構  造:RC造+木造在来工法  地下1階地上2階建て
  • 延床面積:184.38㎡ (55.77坪)車庫含む
  • 敷地面積:418.49㎡ (126.59坪)
  • 備  考:蓄熱式温水床暖房

 

独立前夜の私を信じて

中澤建築設計事務所として独立し、手がけた最初の住宅です。いわば建築家デビュー作です。施主は高校の同級生で、仲の良いという関係でもなく、お互い知っているという程度でした。私が独立するようだと共通の友人から聞きつけて、声をかけてくれました。

ご両親に会い、何も示すものはないけど、私を信じてくださいと、自分の建築観を語りました。また、「仕事を依頼されれば独立します、だめなら路頭に迷う」と半ば脅迫じみたお願いをしました。人生は不思議なものです。この根拠もない情熱を受け入れてくれて、依頼されることになりました。

この建物の建つ地区は、昔から変わらぬ風景を残すのんびりしたところで、富士山の地下水が湧き出る土地柄でした。水にまつわる神社や寺が点在し「泉の里」と呼ばれていました。そんな「水の流れ」を建物に表現できないかと考え、各部屋どこにいても光と風が滝のように降り注ぐような設計を心がけました。

光と風が滝のように降り注ぐ

私が建築家になるための設計信条とした「自然との共存・有機的建築」につながったと考えています。平面的にもX軸、Y軸方向にそれぞれ風が抜けるように工夫しました。玄関前に道路から玄関内が見通せないように、屋根のある待合所を作り、玄関引戸を全開するとホールと待合所の境界があいまいになり、自然と人を迎え入れる演出を致しました。

家づくりの延長戦

この土地は、竹採公園(かぐや姫発祥の地のひとつと言われている)の近くでした。設計当時知り合ったフラメンコギターリストの吉川二郎氏が、かぐや姫を題材とした曲を構想していました。かくして新築披露時に見学会のイベントとして、コンサートという形で、構想した曲「月の宮古」を披露してもらう事になりました。この縁が始まりで、富士市で吉川二郎氏のコンサート企画をすることになりました。

施主と私の二人三脚で始まった活動が、JIRO富士ファンクラブという会に発展し、現在、多数の会員の協力のもと、運営されています。施主とは、それ以来高校時代とは比較にならない、付き合いの深さとなりました。家づくりが人間関係を深めてくれたと思っています。

常に初心を忘れずに・・・

カーン・カーンと師走の滝川に、乾いた音が響きわたる。
12月17日 上棟式の前の日のこと、土台を敷き終え、大工さん達がいっせいに柱を掛け矢で打ち付けている朝のひととき。
前日まで、扁桃腺にかかり40度の熱が3日続いて点滴を打ちながら現場に通った。そのためだろうか、不安が交差する中、この音が妙に心に響く。次第にその音が小さくなっていき、昔の記憶が鮮やかに蘇ってきた。

中学一年のときの技術家庭で創った作品を先生に誉められたこと。建築家になろうと思った頃。大学に行って、建築に自分に失望し悩んだこと。初めてガウディの作品に接して感動した日。建築の素晴らしさに再び目覚めた日。
数々の夢が生れ、数々の夢が去っていき、諦めずに追いかけてきた日々。そして、今は亡き父に誓ったあのとき・・・・

得も言われぬ心の奮えがやってきた。自然と涙があふれてくる。その時、一本の道が視えた気がした。心にひかれたレールを感じる。手探りで歩いてきた道に光が差した思いだった。
もう戻れない、もう戻れない一歩を歩き出したのだぞと、自分に言い聞かせていると、ふと我に返った。

眼のまえには、リズミカルに柱を建てていく大工さん達がいた。そこでは相変わらず心地よい音が響いていた。

※これは1995年6月17日、私のデビュー作となった「光と風が滝のように降り注ぐ家」で見学会&パーティーを開かせて頂いた折に、皆様に配ったあいさつ文です。建築家が卵から生まれた瞬間でした。常に初心を忘れずに、この日を思い出すことにしています。

2020年10月25日