今泉の公会堂/自然素材と木構造の公共建築

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:2016年3月
  • 構  造:木造在来工法 平屋
  • 延床面積:123.30㎡ (37.30坪)
  • 備  考:土台・柱:富士ヒノキ4寸角 桁・梁:杉静岡県産材

 

雨でも祭りができるように

第2回目の建設委員会にて、三案のプランを提示しました。A案「もっともオーソドックなプラン」B案「土間廊下が内外部空間をつなげるプラン」C案「多用途に変化する革新プラン」です。建築家として最も自信があるのはC案でした。正直他の案は、比較のために用意して臨みました。

蓋をあけてみると、全員一致でC案を押して頂いた。C案とは「真ん中に大きな玄関ホールを持ち、左右に個室を配する。和室と集会室を離すことで、それぞれが同時に使う事もでき、落ち着いた和室が演出できる。玄関ホールは、時に会議室の延長としても使え、お祭り時には内外部解放された使い方もできる。敷地に対して最もコンパクトで道路側に広場が確保できる。」というものです。

この時の原型をほぼいじることなく、最終案まで進みました。従来の公会堂のスタイルからは程遠い提案にもかかわらず、理解を示して頂けた建設委員会のメンバーに感謝いたします。建築はつくづくクライアントの理解力があって初めて陽の目を見るものだと、実感しました。

難しい仕事をこなしてくれたパートナー

早々とプランの方向性が打ち出せたので、最大の焦点は建設費でした。平屋とはいえ、大きな屋根の大ホールがあり、誰の目にもお金がかかりそうと映りました。ただ私としては、入札ならこの建物を造ってみたいという業者が現れると信じていました。

それが入札で最低価格を提示し、施工を担う事になった「建築工房わたなべ」でした。明らかにギリギリの工事金額の提示にもかかわらず、仕事内容は細かいところまで配慮されて最高の建物が出来たと思います。どんなに自信のある図面を描いても、それが造れる相手がいなければ絵に描いた餅です。「建築工房わたなべ」は最高のパートナーとしてきっちり仕事をこなしてくれました。

これから町内のシンボルとして何十年も使われていくことでしょう。時間が経てばたつほど味わい深い物になる素材を使用しています。町内の愛される建物になって頂ければ、建築家冥利に尽きます。どうか可愛がって育てていって欲しいと思います。

2020年10月03日