荒田島の家/向かい合って住む!新しいスタイルの2世帯住宅

  • 所 在 地 :静岡県富士市
  • 竣  工:1999年4月
  • 構  造:RC造+木造在来工法(混構造) 地下1階地上3階建て
  • 延床面積:285.02㎡ (86.21坪)車庫含まず
  • 敷地面積:209.72㎡ (63.44坪)
  • 備  考:RC打ち放し 蓄熱式温水床暖房 グレーチングの中庭テラス

 

旗ざお敷地に求められたもの

30メートルの細長い私道の先に、60坪の土地がありました。いわゆる旗ざお敷地というものです。親子でそれぞれ車を持ち、3台が常に使われていました。現状では、3台が私道に縦に並び、出し入れするたびに入れ替えをするという、実に不便な状態でした。

建替えるにあたっては、この状況を解消する事と、この機に本格的に住まう2世帯(親世帯、息子世帯)が、お互いのびのび暮らせるような提案を求められました。

向かい合うプランもスキップで干渉を避ける

敷地は周りより一段低く、脇には小川が流れ、風通しがよくない土地でした。1階に3台の車が入るスペースを確保するため、RCと木造の混構造を提案しました。駐車スペースを確保するため、コンクリートの大梁でスパンを飛ばし、上部を軽い木造(2層分)にすることで、大胆な構造が可能となったのです。

親世帯の地下にはRCの倉庫を作りました。敷地の支持層が地盤下1.2メートルまで掘る必要があったので、埋め戻さないで半地下として利用したのです。

親世帯、子世帯はそれぞれ独立して機能が揃い、中庭をはさんで向き合うプランとしました。このプランの大きな特徴は、お互いの視線が交わらない様に建物の床レベルを半分の高さでずらし、お互いの生活が干渉しない様に心がけたことです。

中庭は2階レベルでグレーチングの床を使ったテラスとして、風通しをよくしました。光あふれる中庭には、互いのバルコニーがらせん階段で結ばれ、外から直接部屋に入れるようになっています。お互いの生活圏を明確にし、付かず離れずの関係にした事で、それぞれが思い思いの生活スタイルを保っていられるようになりました。

スープの冷めない距離の関係

週末にはお孫さんが、おじいちゃん家に泊まるといって、遊びに行くそうです。60坪の敷地内にあっても、他人の家に泊まりに行く感覚が持てる「スープの冷めない距離」の2世帯住宅となったのです。

2世帯住宅設計のポイント

ご両親が揃っている2世帯では、しばしば嫁、姑の問題が発生します。これは皆さんがご存知のようにお互いが気を遣い、設計者も十分に注意を払って設計します。意外と気づかないのが親子の関係です。父、息子のような実の親子では、互いのことを言い出しにくく、内に秘めているものです。この機に親から独立してもらいたい父と、まだ甘えたい息子、またその逆もあります。具体的なプランに反映しずらい父子の心情を察する心配りが、2世帯住宅設計では大事だと思います。

2020年10月21日