上棟式(投げ餅編)

皆さん、投げ餅って覚えてますか? 私の子供の頃(昭和40年代)は高度成長期真っ只中、毎週どこかで上棟式やっていました。学校に着くと「○○さん家、今日建前みたいだよ」 と情報を得て学校帰りに友達と、餅拾いに行ったものです。(地元では投げ餅を行う印に屋根に弓を張りました) 上棟式に投げ餅をするのは当たり前の時代でしたが、現在ではほとんど見かけません。投げ餅という言葉自体はじめて聞いた人が増えています。 投げ餅とは、上棟式に屋根から餅を投げて、地域の人に拾ってもらい皆で祝ってもらうのです。 親餅には祝儀が入っていて、大人が取り合いで大喧嘩したものです。

つづく

■なぜ投げ餅しなくなったのでしょう

答えは簡単です、大変だからです。家が買い物になってしまった今、上棟式そのものを簡単に済ます時代ですから、さらに大変な投げ餅は、よほど施主がやりたいと思わないと実現しません。お金もかかりますが、それ以上にたくさんのお手伝いさんが必要です。準備が大掛かりになるので、日程も一度決めると変更がききません。天気や工程も心配しながらの準備では、お施主さんは気疲れで想像以上に疲れるでしょう。 こうした事がわかっているので、設計者も工務店も勧めなくなりました。

■そんな大変でやる意味があるの?

施主として1回、設計者として4回おこなった経験からすると、意味があります。特に施主の立場からすると、感じるものがあります。それは人との結びつきです。投げ餅をするという事は、上棟式の規模が大きくなります。親戚、ご近所、たくさんのお手伝いさんが必要です。近所付き合いのありがたさに改めて気がつき、日本の忘れつつある風習は、家づくりという物づくりを通して、「人づくり」をしている事に 気がついていただけるでしょう。そしてお施主さんの家づくりの思いが、携わる人々に伝わります。何よりも大変なことは、その分感動も大きいのです。 きっと忘れない思い出となることでしょう。

 

 

 

■投げ餅を準備するには

現在は投げ餅を業者に依頼するのが通常です。袋に入っていて、丁度いい大きさで紅白にしてくれます。個数も予算次第で決められます。 気をつける事は、業者によってだいぶ金額が違います。米屋や餅業者やお菓子屋などいろいろです。地元の工務店に相談して餅専門業者を 探しましょう。注文単位は原材料の重さです。もち米一升で何個できるか聞いてみましょう。当日作ったものを届けてもらえるのがベストです。

■自分で餅を作るには

お祝いなので、なるべく手づくりがいいと考えるのも自然です。お正月用の餅を自宅で作っている人なら、 難しくないでしょう。ただし、昔のように投げ餅を丸めるのは容易ではありません。衛生上、袋に詰めないとならないので、昔以上に手がかかります。 そこで勧めるのが親餅や四方餅や引き出物に入れる餅の分を自分たちで作ることです。
●親餅は一升、四方餅は一升を四つに分ける。
●引き出物用は、奇数個が単位で人数分を掛けます。丸める大きさによりますが、一升30~40個くらいできます。
●経験上、もち米10キロで6升強あります。

 

※混構造で地下(道路面)がRCの車庫を先行して作ったので、こちらで近所の人も手伝って作業しました。


静岡県富士市での経験をまとめてみましたが、地方によって違いますので、地元の工務店によく相談して準備してください。


■ところ変われば

茨城県水戸市で行ったときは、投げ餅の合図に、吹き流しを屋根に留めました。また吹き流しはお嫁さんの実家が用意するそうです。 投げ餅よりお菓子の方が多かったですね。ボールに番号をつけて、拾った人に景品をあげました。地方により風習が違います。こうした事を感じる出来事が昨今少なくなってきましたが、上棟式は、よき日本人の精神を垣間見ることができる、数少ない経験のひとつです。

筆者自らが施主として経験した上棟式の様子をブログで紹介しています。
「建築家自邸物語」地鎮祭・上棟式編

2020年10月15日