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蓄熱式温水床暖房のこと教えて

■ 温水配管モルタル蓄熱式床暖房システムとは?

床下に温水の流れるポリブデン(プラスチック)管を床暖房したい場所に配置します。その配管をモルタル(厚さ8cm程度)で埋めます。使用時は、配管にお湯が通り、モルタルを暖めます。やがてモルタルが、全体に温まり飽和状態になり、空気を暖めるのではなく、人体に最も吸収のよい遠赤外線(低温輻射熱)で直接人体を暖めます。これが輻射型というもので、蓄熱式床暖房のすばらしいところです。熱源が感じられなく、陽だまりのような、気持ちのいい暖かさとなります。低燃費で建物全体を暖めることができ、お年寄りに危険なヒートショックを作りません。安全、快適、省エネな暖房システムといえます。

つづく

■ メリットとデメリット

メリット(長所)

● 暖める範囲が大きいほど、施工費と燃費が他方式に比べ安くできます。
● 結露の起きにくい環境を作り出し、自然から暖房効果を得ることで(ダイレクトゲイン)日中の太陽光が床に蓄熱され省エネになります。
● パネルではないので大きさに左右されず、洗面所や浴室など空間の隅々まで自由な設計が可能、そのためヒートショックをさけられます。
● 接続するボイラーはガス、灯油、電気のどれでも選択できます。将来的にヒートポンプの開発が進めば、施工されたシステムはそのままで、ボイラーをかえるだけで夏の蓄冷房も夢ではありません。


デメリット(短所)

● 特殊な施工なので、熟練した技術と設計が必要。経験と知識がトラブルを回避します。
● 使用する床材料の特性を十分把握しないとトラブルになります。対応できる床材料の選択に限りがあります。
● 温まリ始めるのに時間がかかり、急激な温度変化や部分暖房は苦手。

上の図面は床暖房の配管を示しています。

色分け(3色)の範囲に系統を分けます。それぞれが配管120m以下に抑えられています。渦巻きのようなものが、配管経路です。一度モルタルに蓄熱させてから、飽和状態になって輻射熱で床、建物を暖めますので、床面にむらが出ません。
また、設計で重要なのは、配管の循環経路です。120mの中で行きと帰りでは配管を通るお湯の温度が違います。行きと帰りの配管が偏らないように設計するのがポイントです。この家の場合は、個室+トイレの一系統(緑色)とその他(ピンクとオレンジ)が別々にサーモ付タイマーで制御されています。

計画時点で、予算と生活スタイルを考慮して、床暖房範囲を決めていきます。ポリブデン管は120メートルのつなぎ目無しで、一筆書きのように計画します。つなぎをとらない事でトラブルを回避しています。120メートルでおよそ15畳ほどをカバーします。それ以上大きな空間は系統を分けます。面積が増えるほど割安になります。およその目安として3系統50畳(25坪)120万円ほどで、標準的な家の1階のすべて(居室は基より水廻りから玄関まで)を床暖房することができます。


■ 蓄熱式床暖房の施工手順

※ポリブデン管を系統ごとに一筆書きで敷き詰めていきます。

※時間をおかないで翌日にモルタル(蓄熱層)で配管を埋めていきます。配管を傷つけないために段取りが重要です。

※配管の太さが一般既製品とは違うのでヘッダーを専用に制作します。

蓄熱式温水床暖房の設計から施工手順を、設計者自邸の例をあげて詳しくブログに書かれていますので、興味のある方はこちらも見てください。
建築家自邸物語、床暖房編

蓄熱式床暖房にこだわるわけ

床暖房が欲しいというと、温水式か電気式のどちらにしますか?と聞かれると思います。OMソーラーなどパッシブソーラーという考えもあります。電気は手軽に施工できるけど、電気代が心配だなあと言うのが一般的な知識だと思います。こうした熱源の選択に隠されて、もっと重要な事が忘れられています。それが蓄熱型なのか直接型なのかということです。

つづく

■ 蓄熱型と直接型 

一般に言われている多くの床暖房は、木質の床材と下地の間に温水菅または電気シートを挟んだ直接型の方法です。蓄熱容量の小さい床板では、ヒーターの周りは熱くなりますが、少し離れると冷たく感じます。そしてヒーターを切るとすぐに冷えてしまいます。電気カーペットとたいして変わりありません。蓄熱型とはいったん床下のモルタルや基礎に熱を蓄えさせてから、熱が飽和状態になったところで、輻射熱として床に伝わります。正確にいうと床を暖めるのが目的ではなく、家自体を暖めることが目的です。温まるのに時間がかかりますが、床面の熱むらは少なくなります。熱源を切ってもすぐに冷めることもなく、タイマーで熱源の管理をすれば、冬の間一定の温度を保つことが可能です。床暖房を局所的に考えるより、全館暖房する発想が蓄熱型です。

■ 全館暖房 

全館暖房と聞くと高いんだろうと思われますが、それはメーカーのパネル一体型の床暖システムを使おうと思うからです。メーカー品は安くありません。一部の部屋に使用する程度の面積に適しています。全館暖房しようとしたら高くつきます。蓄熱型床暖房を実現するには、設計段階から計画し、基礎工事、床仕様を考え、市販の配管材料とボイラーの組み合わせを考えることで、ローコストで品質の高い床暖房が可能になります。ボイラーの熱源は灯油でも、ガスでも、電気(ヒートポンプ)でもいいのです。

■ 床暖房の本当のねらい (本当に欲しいのは水廻り)

床暖房の本来の目的は、熱源が感じられない自然な暖かさで、部屋と部屋の温度差がない空間を作ることです。居間だけを暖め、廊下やトイレに行ったら急に寒くなり、お年寄りを危険にさらすのが、今までの住宅暖房でした。これをヒートショックと言います。家全体を暖め温度差をなくし、しかも燃費のよい暖房方法が蓄熱式床暖房なのです。この方法は、結露を起きにくくします。また、蓄熱の部分をモルタルにすることで、太陽光をもっとも有効に使う、ダイレクトゲインが可能です。全館暖房なら吹き抜けで寒いということもなく、プランを考える上でも選択の巾が広がります。モルタル下地の場合、夏には逆にひんやりした床になり、夏の省エネにも貢献します。施工技術や設計計画が面倒なために、敬遠されていますが、住む人にやさしいこの床暖房システムをこだわり続け、研究し提案させてもらっています。


※浴室と洗面脱衣室に同じタイルを使用できて冬でもタイル床が寒くありません。

※洗面脱衣室とその先の浴室洗い場まで配管する。

■ 蓄熱式床暖房の施工手順

蓄熱式温水床暖房の設計から施工手順を、設計者自邸の例をあげて詳しくブログに書かれていますので、興味のある方はこちらも見てください。

建築家自邸物語、床暖房編

上棟式(建前)のこと教えて

上棟式(じょうとうしき)とは、新築の際に行われる神道の祭祀である。棟上げ(むねあげ)、建前(たてまえ)ともいう。 建物が無事であるよう願って行われるもので、通常、柱・棟・梁などの骨組みが完成した状態で行われる。 祭祀ではあるが、住宅の場合、一般的には神主を呼ばず、棟梁が中心となって儀式を執り行う。 施主は工事の無事と、職人へのねぎらいを伝える貴重な場として、儀式後、直会(なおらい)という宴会を催すのが通例です。

つづく

■上棟式をやらなくてもいいのか

「ハイ」です、やらなくてもいいです。やるやらないは、施主が判断するもので、地域の慣習やしきたりに囚われることはありません。やらないと手抜きされそうと心配する方もいらっしゃいますが、職人はプロですからそれはありません。では、上棟式をやらないかというと、私の建主はやるほうが多いです。なぜかというと、施主が職人と接し感謝を伝える数少ない機会だからです。 施主挨拶やご家族の紹介も職人との交流です。上棟式は「施主はもてなす側」です。職人も人の子です、施主に感謝されてうれしくない人はいません。感謝を伝えたいと思うなら、簡単でもいいからやったほうが良いと説明しています。

■まずはどうすればいいか

施工者と日時を決めます。休日の大安などを決めても、工程がうまくいかない場合もありますので、休日を優先するか、吉日を優先するか、柔軟に考えた方がいいでしょう。日で気をつけなければならないのは、「三隣亡(さんりんぼう)」。 言葉のとおり、近隣三軒が亡ぶほどの災いがある日のことで、着工・上棟などは通常避けます。迷信だともいわれていますが、本人は気にしなくても、ご近所が気にする場合もあります。 日が決まったら、上棟式の規模を考えます。ご両親、親戚、近所の方々、声をかける人数が増えるほど、規模は大きくなります。また、最近はあまり見かけませんが、投げ餅をするときは、準備も費用もかかりますから、早めに決断しましょう。

■当日が雨だったら

雨でもやります。よっぽどの台風直撃で危険な状態でなければ、予定通り進めます。当日雨予報なら、前倒しで工事を進めておいて、当日は儀式のみの場合もあります。 吉日を希望することが多いので、上棟をずらすと予備日も難しく、工事も大幅に遅れるので大抵は強行します。天気だけはそれこそ神頼みです。

※こちらは本格的な儀式ですが、今は簡単に行うことの方が多いです。


■出席者
 施主と家族、ご両親、施工業者、設計士(小規模)+ご親戚、ご来賓(中規模)+ご近所、友人(大規模)
■上棟式のお供え物
米(皿山盛り、前日に洗っておく) 神酒(1升) 塩(皿1杯)神酒の盃(茶碗等)人数分

以下(地方によってはまったく用意しない場合もある)
尾頭付き海魚(金目鯛、鯛等)魚屋に前もって注文しておく事
海の幸3種(スルメ、コンブ、ワカメ等)
野菜3種(大根、人参、なす、きゅうり、キャベツ等)
果実3種(りんご、みかん、バナナ等)

■祝儀
施主の裁量で決めることなのですが、過去の経験としては、職人一律1万円、棟梁のみ3万円くらい。 金額は施主が一番悩むところですが、恥ずかしがらず、設計者や工務店に相談すれば、出席人数も調整してくれることでしょう。

■上棟式当日の手順
①午前10時にお茶をだす。
②12時に昼食をだす。人数分のお弁当、お茶、味噌汁など用意

●上棟の儀は最上階もしくは屋根に登る(男のみ奇数人数)
③午後3時頃上棟の儀(開始時間は季節や工事進捗状況でかわる)
④棟梁が幣束(ヘイソク、最近では上棟セットと呼ばれる)とお供え物のある祭壇にお払いをする。
⑤施主から順番に祭壇に向かって二礼二拍手。
⑥建物の四方に酒・塩・米をまいて清める。
⑦上棟の儀の後、祭壇の前で乾杯。
⑧建物の四方に向かって、投げ餅をする。(行う場合)

●1階に下りて直会(宴会)
⑨施主のあいさつ、乾杯、職人さんの紹介など
⑩施主から職人へご祝儀を渡す。
⑪お開き、手締め。

■直会(なおらい)の準備

出席者の人数を確認して、食事の量を決める。昨今は1時間以内で終わることも多いので、たくさん用意しなくても十分である。寿司(大皿で良い)オードブル、つまみ(乾き物)など、 ビール、お酒(当日、上棟祝いでもらうことがあるので、用意しなくてもいい)ウーロン茶、ジュース。 飲酒運転が厳しい昨今は、お酒を出す場合、乗り合いか代行など、職人には十分に注意してもらう必要がある。

■引き出物の中身
お祝いなので、結婚式と同じイメージで、金額はそれほどかけません。
■祝いのお酒(小瓶)酒屋に上棟用として売ってます。350円くらい
■おもち(奇数個)か紅白饅頭のようなお祝いもの
■お赤飯+鯛の折り詰もしくはお弁当
■手土産 のり、お茶、鰹節、お菓子、タオル等1000円くらい
一人当たりの金額を決めて、工夫してみてください。

※直会は雨でもなるべく現地で行います。最近は当日ではなくて別の日に棟梁や現場監督など少人数で行う事もあります。

※過去の経験をまとめてみましたが、上棟式の内容はかなり地方によって違いますので、地元の工務店によく相談して行ってください。


■上棟こぼれ話(本音と建前)
昔、有名な棟梁がいました。その棟梁が明日、建前と言う前の晩になって、 玄関の柱を短く刻んでしまい、収まらなくなってしまいました。 棟梁は、己の未熟さに死のうと考えたが、それを見た棟梁の奥さんが、自分が代わりに死んでも良いとまで思い、 棟梁に酒を飲ませて寝かしつけ、寝ないで考えたのが、マス組と言う工法でした。 翌朝目覚めた棟梁は、奥さんの差し出した枡を受け取ると、「わかった!」と言い、 柱の足りない分を、補って納めたのです。 ところが、己の恥が表に出るのを恐れた棟梁は、口封じのために奥さんを殺してしまいました。 殺してから棟梁は、己の犯した罪を悔い、未来永劫、弔うと心に誓い 女の七つ道具を棟の上に飾って供養したと言うのが始まりで、建前の儀式となったそうです。 「タテマエ」にこだわるあまり妻を殺してしまった男の生きざまに、 「ホンネ」で応じた女の悲話が「本音と建前」の語源となったと言われています。


筆者自らが施主として経験した上棟式の様子をブログで紹介しています。
「建築家自邸物語」地鎮祭・上棟式編

上棟式(投げ餅編)

皆さん、投げ餅って覚えてますか? 私の子供の頃(昭和40年代)は高度成長期真っ只中、毎週どこかで上棟式やっていました。学校に着くと「○○さん家、今日建前みたいだよ」 と情報を得て学校帰りに友達と、餅拾いに行ったものです。(地元では投げ餅を行う印に屋根に弓を張りました) 上棟式に投げ餅をするのは当たり前の時代でしたが、現在ではほとんど見かけません。投げ餅という言葉自体はじめて聞いた人が増えています。 投げ餅とは、上棟式に屋根から餅を投げて、地域の人に拾ってもらい皆で祝ってもらうのです。 親餅には祝儀が入っていて、大人が取り合いで大喧嘩したものです。

つづく

■なぜ投げ餅しなくなったのでしょう

答えは簡単です、大変だからです。家が買い物になってしまった今、上棟式そのものを簡単に済ます時代ですから、さらに大変な投げ餅は、よほど施主がやりたいと思わないと実現しません。お金もかかりますが、それ以上にたくさんのお手伝いさんが必要です。準備が大掛かりになるので、日程も一度決めると変更がききません。天気や工程も心配しながらの準備では、お施主さんは気疲れで想像以上に疲れるでしょう。 こうした事がわかっているので、設計者も工務店も勧めなくなりました。

■そんな大変でやる意味があるの?

施主として1回、設計者として4回おこなった経験からすると、意味があります。特に施主の立場からすると、感じるものがあります。それは人との結びつきです。投げ餅をするという事は、上棟式の規模が大きくなります。親戚、ご近所、たくさんのお手伝いさんが必要です。近所付き合いのありがたさに改めて気がつき、日本の忘れつつある風習は、家づくりという物づくりを通して、「人づくり」をしている事に 気がついていただけるでしょう。そしてお施主さんの家づくりの思いが、携わる人々に伝わります。何よりも大変なことは、その分感動も大きいのです。 きっと忘れない思い出となることでしょう。

 

 

 

■投げ餅を準備するには

現在は投げ餅を業者に依頼するのが通常です。袋に入っていて、丁度いい大きさで紅白にしてくれます。個数も予算次第で決められます。 気をつける事は、業者によってだいぶ金額が違います。米屋や餅業者やお菓子屋などいろいろです。地元の工務店に相談して餅専門業者を 探しましょう。注文単位は原材料の重さです。もち米一升で何個できるか聞いてみましょう。当日作ったものを届けてもらえるのがベストです。

■自分で餅を作るには

お祝いなので、なるべく手づくりがいいと考えるのも自然です。お正月用の餅を自宅で作っている人なら、 難しくないでしょう。ただし、昔のように投げ餅を丸めるのは容易ではありません。衛生上、袋に詰めないとならないので、昔以上に手がかかります。 そこで勧めるのが親餅や四方餅や引き出物に入れる餅の分を自分たちで作ることです。
●親餅は一升、四方餅は一升を四つに分ける。
●引き出物用は、奇数個が単位で人数分を掛けます。丸める大きさによりますが、一升30~40個くらいできます。
●経験上、もち米10キロで6升強あります。

 

※混構造で地下(道路面)がRCの車庫を先行して作ったので、こちらで近所の人も手伝って作業しました。


静岡県富士市での経験をまとめてみましたが、地方によって違いますので、地元の工務店によく相談して準備してください。


■ところ変われば

茨城県水戸市で行ったときは、投げ餅の合図に、吹き流しを屋根に留めました。また吹き流しはお嫁さんの実家が用意するそうです。 投げ餅よりお菓子の方が多かったですね。ボールに番号をつけて、拾った人に景品をあげました。地方により風習が違います。こうした事を感じる出来事が昨今少なくなってきましたが、上棟式は、よき日本人の精神を垣間見ることができる、数少ない経験のひとつです。

筆者自らが施主として経験した上棟式の様子をブログで紹介しています。
「建築家自邸物語」地鎮祭・上棟式編

基礎配筋検査のポイント(建主用)

建主が、自分の住宅の基礎を見に行った時の参考になるポイントを挙げました。専門的見方ではなく、構造図とにらめっこする必要がない方法で説明します。何か気づいても、決して現場の職人に直接言わないで下さい。 厳密には場所、太さ、設計判断で、状況が違いますから、 疑問があるときは、必ず設計監理者に聞いてください。

つづく

■全体にきれいであるか?

配筋のピッチは計るにこした事はないが、図面の読み方もわからず、メジャーも持ってないことでしょう。 そんな時は、全体に眺めて、鉄筋が整然と組まれていれば、美しく見えます。

これは直感的に素人でも判ります。うねっていたり、ピッチがばらばらだったりしたときは、汚く見えます。一部分を指摘するのではなく、全体を遠くから眺めてください。

■定着長さが取れているか?

鉄筋の太さが違ったり、一本でいかない場所は、鉄筋を重ね合わせてつなげる事となります。木造住宅規模の鉄筋太さでは、溶接しないで重ね合わせて使うことが多いです。重ね継手といって、重なっている長さが定着長さとなります。

10ミリと13ミリの太さが通常なので、13ミリで50cm強重なっていれば、十分でしょう。 床と壁の立ち上げ部分では、この定着長さが大切になります。壁筋の始点は、床コンクリートスラブ厚の上端です。(型枠から推測する)始点から折り曲げられ床版に伸びた先までが 定着長さとなります。

■かぶりが取れているか?

鉄筋はさびやすく、コンクリートで保護されています。そこで重要な事が、鉄筋と型枠の距離となります。これをかぶり厚といいます。鉄筋の周りを十分コンクリートで保護するためには、型枠から鉄筋が離れていなければなりません。

離れている距離は専門的なので、ここでは均等に離れているかどうかに注目してください。型枠に極端に近づいていたり、底がゆがんで一部沈んでいたりしないか見るといいでしょう。

 

 


中間検査のポイント(建主用)

建主が、自分の住宅の中間検査時の状態を見に行った時の参考になるポイントを挙げました。中間検査とは工事中の建築物が建築基準関係規程に適合するかどうかを判断するため、木造だと屋根ふき工事及び構造耐力上主要な軸組が確認できる状態、簡単に言えば上棟後数週間あたりにおこないます。

この検査は主に行政がおこない、設計監理者が立ち会うもので、建主は特に注意することではありませんが、その頃にしか見られない構造上の確認なのでその頃に現場に行って、状態を見ることは安心につながります。厳密には場所、方法、設計判断で、状況が違いますから、 疑問があるときは、必ず設計監理者に聞いてください。

つづく

■構造耐力上主要な軸組とは?

柱や梁が大事なことは言うまでもありませんが、耐力壁といわれる壁の位置と状態の確認が大事です。耐力壁というのは筋かい(斜め材)や構造用合板を使って、設計上あらかじめ決められた場所に配置しています。こうした柱と梁と耐力壁が構造耐力上主要な軸組となります。

その材料そのものを確認するというより、接合部の仕口、金物の使用などを確認します。とはいえ、どの場所に必要なのか、図面がないと判断できないし、こういったことは設計監理者が確認することなので、ここではどういった点に注意すればいいのか、ポイントを挙げてみます。

■筋かいの場合、ホールダウン金物に注意

耐力壁を筋かいでおこなっている場合は、柱を土台と緊結するホールダウン金物と筋かいがバッティングしてないか確認します。ホールダウン金物は建物の角にある事が多く、筋かいも角に配置しやすく、取り合いを注意しないとお互いが邪魔をしてしまうことがあります。

また、構造用合板とも共通することですが、耐力壁の端部近くには基礎と土台を緊結する役割のアンカーボルトが必要です。筋かいがしっかりした金物で柱や土台にきれいに取り付いているか見てみましょう。また将来的にエアコンの穴などが筋かいを切断するおそれもあるので、この時点で部屋のエアコンをどこにつけるのか相談しておいた方がいいでしょう。

■構造用合板は釘のピッチとめり込みに注意

合板の位置の確認が基本だけど、構造図や確認申請図書にはっきり明記しているので、間違えることはあまりないでしょう。それより見落としがちなのが釘のめり込み。釘がめり込みすぎると、板をいためてしまうので、構造の役目をしなくなります。

最近は空気銃のようなもので釘を打つので、空気圧に注意しないと、ついつい打ちすぎることになる。壁に使う合板などは約10ミリ程度の薄いものなので、ちょっとでも釘がめり込むと強度を失ってしまうものです。

これに関しては大工や監督の意識がどこまであるかが、決め手になるので、心配な時は最初の時点で確認するか聞いて見ることです。めり込んでしっかり打ってあるなと勘違いする笑えない話もあります。

こうした意識を持つ工務店や監理者か、そうでないかではやがて大きな差となって現れることになるでしょう。釘のピッチに関しては細かければ言いというものでもなく、構造計算の仕方で、バランスよくピッチを指示している場合もあるので、こちらは疑問があったら専門の設計監理者に聞いたほうがいいでしょう。

地鎮祭のこと教えて

地鎮祭(じちんさい)は「とこ しずめ の まつり」といって、 その土地の神を鎮め、土地を利用させてもらうことの許しを得る 神道の祭儀だといわれています。一般には、土地の神を祀って工事の安全祈願をすると考えられています。

上棟式は大工中心で行い、施工者への労いと今後の工事の士気を 高める意味があります。行うかどうか、施主の判断によります。 最近は簡略化され、やらない事もあるほどです。 しかし、地鎮祭というものは、相手が土地の神なので、 信心深くなくても、大抵は行った方がいいとおもいます。費用もほとんど神主へのお礼程度で済みます。

神道の祭儀だから、神主さんに来てもらい、儀式を行うのだけれ ど、聞くところによると、キリスト教式もあるようです。 一度だけ、仏教でやったことがあります。 内容的には、違いが余り感じられなかったけれど、 お経を唱えたり、半紙にお経を書いてあったのを覚えています。

つづく

■まずはどうすればいいか?

施工者と日時を決めます。休日の大安などは、かなり前から神主に依頼しないと、空いていない可能性があります。日にこだわるなら、着工よりかなり前でも、できる時にやっておいたほうがいいでしょう。

着工直前では、選択の余地がなくなります。日が決まったら、依頼する神主を決めます。家族が付き合いのある神社か、なければ工務店に任せた方がいいでしょう。神主には、用意してくれる物(お供え物など)と、送り迎えが必要か確認しましょう。

■出席者

施主と家族、ご両親(近くに住んでいた場合)工務店代表者、現場監督、設計士、土工事業者(その日から工事する場合等)

■地鎮祭のお供え物

『施主側が揃える物』
米(皿山盛り) 神酒(1升) 塩(皿1杯)
以下(神主が用意してくれる場合有)
神酒の盃(茶碗等)
海の幸3種(金目鯛、スルメ、コンブ、ワカメ等)
野菜3種(大根、人参、なす、きゅうり、キャベツ等)
果実3種(りんご、みかん、バナナ等)

『工務店が用意する物』
竹、砂、鍬(神主かどちらかが用意)

工事業者への謝礼は行われていない方が多いみたいです。 毎回、業者に聞くのですが、受け取っていませんという方が 多いですね。ただし、竹を用意してもらうのに、5000円くらい払う ケースもありました。 竹もこだわると種類があって、とある所から買ってくる 事があるそうです。 地域や神主によって、結構違うので、行う際は 神主によく相談した方がいいですね。

■神官へのお礼(初穂料)

最近は、地鎮祭がシステム化されたような感じで、ほとんどの お供え物を神主側でそろえてくれる場合が増えました。 こうしたケースで3万円くらいお支払いしています。

■地鎮祭の手順

①神主が祭壇に入ってお払い開始。
②神主が施主や工務店の名前を挙げて、工事の無事をお願いする。
③神主が土地の四方に向かってお払い。
④砂の山に向かって起工式。最初に設計者が釜を持って3回刈るしぐさ。 次に施主がくわを持って3回耕すしぐさ。 最後に施工者がシャベルをもって3回掘るしぐさ。 このときに、「エイ」と掛け声をだす。
⑤施主から順番に、玉串を祭壇に掲げて二礼二拍手。
⑥神主がお払いして終了。
⑦終了後、お神酒で乾杯。
(大体長くても30分ほどですが、地方や神主によって違いがあります。)

筆者自らが施主として経験した地鎮祭の様子をブログで紹介しています。
「建築家自邸物語」地鎮祭・上棟式編